トロントでドキュメンタリー製作を続けている石原牧子さんの作品「The Last Chapter(最終章)」が東京ビデオフェスティバルでみごとグランプリを獲得した。喜びの石原牧子さんにインタビュー、12の質問をさせていただいた。

 
【Q7】製作にはどれくらいの期間がかかりましたか? どこかから補助、援助などありましたか?

グラント(交付金)申請のプロポーザルを書き始めたのが2003年の秋で、結果が分かるのが翌年でしたから、締め切りの違う申請書一つ一つをみてもかなりの時間がかかっています。グラントはToronto Arts Council, Ontario Arts CouncilとCanada Councilから頂きました。フリーで手伝ってくださった方も何人もいます。今回グランプリで賞金を頂いたのでそれも長編の完成に使わせていただきたいと思っています。
 
【Q8】古い写真や画像にアニメや動画作業を加えるなど工夫しているのは、どういうアイディアからですか?

この映画は昔を語る部分が多くって、もちろん内面的には現在進行形なのですが、その過去の家族の姿を現在に組み入れるのには動かしたら面白いんじゃなかろうかと思って、それは始めからやりたかったことの一つです。だから、父のサーベルを持つ手が動いたりします。
私の性格から漫画チックなのが好きなのですが、でもやりすぎるとこっけいになるから、適当なところで抑えています(笑)。かなり内容がヘビーなところがあるので静止画の一部を動かすことによって、見ている人の気持ちをちょっと軽くしたい、っていうところもあります。
 
【Q9】受賞後、どのような反響がありましたか? 今後カナダなど日本以外の国で上映される予定などは?

横浜で受賞パーティーがあり、若い方からお年寄りまで、男女人種に関係なく赤の他人の方々がよかったと言ってくださったのは大変うれしかったです。 一番うれしかったのは東京の上映会に来てくれた兄が「とてもよかった」と喜んでくれたことです。それと審査員の羽仁進さんや小林はくどうさん、椎名誠さんなどからお褒めの言葉を頂いたことです。
Nippon Connection Festival という映画祭が4月2日から6日までドイツのフランクフルトで開かれ、「最終章」も上映されました。その中からデジタル部門で選ばれた作品がヨーロッパ各地を巡ることになります。カナダでは残念ながらまだ長編が完成していないので公開できないのですが、いずれ、見ていただきたいと思います。
【Q10】今まで日加タイムスに何度か牧子さんの執筆記事が掲載されていますが、特にトロントのホットドックス・ドキュメンタリー映画際で上映された「蟻の兵隊」や「ディア・ピョンヤン」についての鋭い批評(2006年5月19日号)が印象に残っています。ドキュメンタリー映画製作に興味を持つようになったのはいつごろからですか。

ドキュメンタリー映画には昔から興味がありましたが、製作に興味を持ち始めたのはカナダで仕事をしているときに社内の資料センターの紹介ビデオをまねごとでやったときからかもしれません。あれは1998年か99年ごろのことだったかな。自分のスタッフ達ともランチタイムを利用して撮り合ったり。結構楽しかった。安いソフトで動画の編集を覚えたのもこのころなんです。人間遊んでいるといいことあるんですよね。
 
【Q11】ドキュメンタリーにはどうしてもプライベートな事柄が入ってきますが、「最終章」で牧子さんは自分の家庭を取り上げています。これについてどう思いますか?

プライバシーというのは意外に普遍性があるんですよね。でも、黙っているか、形にするかで自分の生き方も変わってくる。これはある意味で監督としての自分へのチャレンジでした。それをしておかないと他の人の生活の中にはいっていくのは難しいのではないかと。これには、私の日本の家族、カナダの家族の絶大なる協力なしには出来なかったことですが。「ディア・ピョンヤン」の監督も、まず自分の周りから出発したと言っていたのを記憶しています。
 

【Q12】将来、次の作品を手がける計画はあるのですか?

いま、進行中なのが、仮題「5人の5年」です。団塊族の人5人を5年間フォローし、自分のしたいことが実現に向かっているかどうかを撮っています。今年で3年目です。5年ってあっという間にたっちゃうんですよね。ほとんどの人は5年前のことなど覚えていないはずです。だから、一年一年目標をもって生きようって。 それから、今年の秋ごろ、ユダヤ人のホロコーストで有名な、「ハンナのカバン」の話がトロントの制作会社によって映画化されますが、その日本語の部分の英訳のお手伝いをしています。最近の子供達の日本語の話し方ってだいぶ昔と違うんですよ。英語って理論的な言語ですが、日本語はいかようにもくだけて話せる。だから翻訳しながら汗かいてます(笑)。