トロントでドキュメンタリー製作を続けている石原牧子さんの作品「The Last Chapter(最終章)」が東京ビデオフェスティバルでみごとグランプリを獲得した。喜びの石原牧子さんにインタビュー、12の質問をさせていただいた。

 

【Q1】「東京ビデオフェスティバル(TVF)」とはどのようなイベントなのですか?

1978年から毎年開催されている国際的な市民ビデオ映像祭で、日本ビクター(株)が始めたものです。国籍、年齢、プロ、アマを問わず、誰でも応募できるユニークなコンテストです。今年で30年目を迎え、今回は日本国内750作品、海外1260作品の合計2010点で、世界53カ国からの応募がありました。佳作が100点、その中から優秀賞が30点、そして最後に3月2日の授賞式でグランプリが発表されました。
映像ジャンルはアニメーションでも、ドラマでも、ドキュメンタリーでもいいというところが魅力です。審査員もそれぞれのジャンルの方々で構成されています。第1回目は手塚治虫さんも審査員でした。
 
【Q2】カナダに住んでいる牧子さんがTVFに応募しようと思ったきっかけは?

日本語か英語であれば応募できるので、ちょうど手がけているドキュメンタリーの縮尺版を作って、締め切りぎりぎりで応募しました。自分のやっていることが他人の目から見てわかるのかどうか確かめてみたかったこともあります。とにかく数年かけているので、客観的に見るのが難しくなっちゃったんです。
 
【Q3】全部で2010点の応募作品の中から牧子さんの作品が優秀賞まで勝ち残って、ついに「ベスト3」のグランプリに入ったことは素晴らしいことですね。入賞の知らせを受けた時の感想は?

例年ビデオ大賞のグランプリは一点ですが、今年は私と黒川さんの2人で仲良く頂きました。そして、消え行く夜間学校という社会問題をあつかった斉藤さんの作品がビクター大賞でした。
東京の実家にいるときにメールで、30人の優秀賞にはいったと連絡がきて、それだけで、信じられなかったんですよ。それに飛行機代もホテル代も出してくださるって言う、夢みたいな話でしょ。ロッタリーだって当たったことがない私ですから。結局、飛行機代が出るというのはグランプリの賞品でもあったのだと、ずっとあとで気がつきましたけど(笑)。
【Q4】受賞式に出席したときの模様をお話しください。

場所が横浜というので、すぐに「お母さんもくる?」ってさそったら一つ返事で、「わー連れてって」。本人は横浜に着くまでよくわかっていなかったようですけれど。それから私はいったんトロントにもどり、夫のデービッドと一緒にまた日本に行きました。
授賞式はパシフィコ横浜という超大型の会場でおこなわれましたが、かなり時間が長く、母が疲労してきたので、ホテルまで連れて帰ろうと思ったときに私の名前がスピーカーで流れました。実感なかったですよ、でも。10キロのものすごいトロフィーを渡されたとき、その重さで実感したというか。
トロントにもどってから、JVCカナダ社の池辺渉社長より、賞品のHDカムコーダーカメラの海外版を頂きました。
 
【Q5】牧子さんの作品「最終章」はどのような内容ですか。ざっとかいつまんで説明してください。

日本の父が亡くなる前に回顧録を書き、それをカナダにいる私が読んだことから展開します。その最後の章に私たち3人の子供について記載があります。私と父の関係を中心に兄、母、娘、夫が国境を越えて登場します。そして、父と私が時代を超えて撮った写真、8ミリ映画と現在の映像が混ざり合って、父への理解の糸口を作っていく、そんなどこにでもありそうな話です。
20分制限なので、かなり省略していますが。長編のほうは今年の夏ごろ完成する予定です。だから子供のほうが先に勢いよく走り始めたというか。
 

【Q6】この作品で訴えたかったことは?

家族の対話の大切さと、理解しあう心です。それは今でも日本の家族、カナダの家族のなかで継続していきたい課題です。たまにけんかはしても、家族って本当は誰もが心のよりどころとして安心できるところだと思うのですが、なかなかそんな当たり前のようなことがいつの世にもかなわない。
長編でカバーされている父の心のよりどころというものをもっと、私が理解していたならな、と今は思います。だから、作品で訴えるというより、むしろ作ることを通して自分が人間として成長させてもらった感じです。
そして見てくださった方達の中でディスカッションが生まれれば本望です。