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カナダのワクチン開発事情 ハンバーガー病がなくなる日は近い?

カナダの夏といえばバーベキュー。ところがこの楽しいはずのバーベキュー、「ハンバーガー病」にかからないようご注意を!

1982年に米国のオレゴン州やミシガン州などでハンバーガーを食べた人々が次々に食中毒にかかった。いわゆる「ハンバーガー病」である。

この病気・・・そう、真犯人はあの大腸菌「O157」であった! カナダでも夏場のバーベキューで生焼けの牛肉を食べた人々がO157に感染するケースがみられる。

O157による感染被害はもちろんハンバーガーに限らない。2000年にはオンタリオ州にある小さな町ウォーカートンで水道水がO157に汚染され、なんと町の人口の半数にあたる2300人もの人々に感染、うち7人が死亡するという惨事に至った。

大腸菌はあらゆる動物に存在し、普段は動物のみならず人間にもほとんど害を及ぼさない。ところがO157は大腸菌の変種であり、動物には無害でも、人間には重大な危害を与えてしまう厄介なバクテリアなのだ。

感染ルートも牛の生肉や半生肉を食べることのみならず、酪農場や牛糞の肥料から地下水に伝って農作物へ感染するケースなどさまざま。感染すると胃痙攣(いけいれん)や下痢などの症状がみられ、通常は5〜10日程で回復するものの、悪化すると時として死に至ることもある怖い病気だ。水分を体内に保つ治療法が主流となっているものの、いまだ治療薬は開発されていない。

ところが、今、この救世主がカナダに現れようとしている。オンタリオ州ベルビルに拠を構えるバイオ企業「バイオニッシュ・ライフサイエンス社」である。

同社は2007-08年カナダのライフサイエンス企業トップ10のひとつに数えられる優良企業。07年には動物用医薬品部門で優秀賞を受賞した。非常にユニークなワクチンを開発し、その効果に注目が集まっている。

どこがユニークかというと、人を大腸菌O157から守るために、「人間」にワクチンを打つのではなく、「牛」に打つところである。

通常、ワクチンは免疫を作るために直接人間に接種されるものであるが、同社のワクチンは牛に与えられ、その免疫系が牛の大腸菌O157の発達を抑えて高レベルの危険度まで増殖することを防ぐ。農場主の依頼によって獣医の指示で牛に処方されるということだ。

なんとか承認取得に漕ぎつけ、すでに米国では条件付きのライセンスを取得し、カナダでも数回の検査を待つだけの状態となっている。このため、すでに牛へのワクチン投与は開始されており、完全承認後の需要増に備えて製造能力の増強を図っているところである。このワクチンが日本の牛たちに打たれる日もそう遠くないかもしれない。

現在、世界のワクチン開発は欧米の大手製薬企業がメインプレーヤーとなっている。カナダにもそれらグローバル企業が活躍する舞台のひとつとして活発な投資が行われている。

サノフィ・アベンティスグループ(仏)のワクチン部門「サノフィパスツール社」はワクチンの統括本部をトロントに構える。1950年代にポリオの撲滅に貢献しカナダで最も有名な製薬会社であったコンノート・ラボラトリーズが所在していた場所である。

サノフィパスツール社は07年には16億本以上のワクチンを供給したが、これは20種類の感染症に対して世界中で5億人以上の人々に接種可能な量である。

今年4月には1億カナダドルを投じてトロントに新たなワクチン研究施設の建設を発表するなど、積極的な投資を続けている。

カナダのバイオ産業全般に目を向けると、500社のバイオ企業が存在し、その資本規模は06年で150億カナダドルにのぼる。関連諸機関も含めると2500社・機関で20万人以上が雇用されている。その年間売上高は30〜40億カナダドルに達し、研究開発には17億カナダドルが支出されている。

その中でワクチン開発も重要なポジションを占めており、活発な企業活動はもちろんのこと、政府や団体がイニシアチブを取るプロジェクトもみられる。カナダのイノベーティブな一面をのぞかせるワクチン開発だが、いつの日かカナダ産ワクチンが世界にはびこる感染症を撲滅してくれることを願わずにはいられない。

※(出所)Beyond Borders 2005-2007(Ernst & Young)、オンタリオ・バイオテクノロジー協議会、他各社ホームページ (今回の執筆担当はジェトロトロントセンター タイソン・ガービー、宮内安成)

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